遺言書は、財産の分配方法を明確に示す重要な書類です。しかし、遺言書で指定した相続人が遺言者よりも先に亡くなってしまうこともあります。この場合、その相続人に関する遺言の部分は無効になってしまいます。本来であれば、相続人が変わった時点で遺言書を更新することが望ましいですが、健康状態やその他の事情により、遺言書の書き換えが難しい場合もあります。
このような予期せぬ事態に備えるために存在するのが「予備的遺言」です。
予備的遺言を活用することで、指定した相続人がすでに亡くなっている場合でも、次に誰が財産を受け取るかを明確にすることができ、相続に関する混乱やトラブルを防ぐことができます。
このコラムでは、予備的遺言の基本的な仕組みと注意点について説明します。
予備的遺言とは、遺言書の中で指定した相続人が相続できない場合に備えて、次に誰に財産を渡すかをあらかじめ定めておく遺言のことです。
通常の遺言では、財産を誰に分配するかを一人または複数の相続人に指定しますが、予備的遺言ではその相続人が相続開始前に亡くなっていた場合に備えて、次の候補者を指定することができます。
例えば、「妻にすべての財産を相続させるが、もし妻が相続開始時に死亡している場合は、長男にその財産を相続させる」といった形で、次の相続人を指定することで、遺産分割の際に発生し得るトラブルや不確定要素を軽減します。
予備的遺言は、相続における不測の事態に備えるための手段として非常に有効ですが、以下のようなケースでは、特に予備的遺言を検討することが推奨されます。
もし指定した相続人が高齢であったり、重篤な病気を患っている場合、遺言者よりも先に亡くなる可能性があります。
このような状況では、予備的遺言を作成しておくことで、相続人が亡くなった場合でも次の相続候補者があらかじめ定められ、相続手続きが円滑に進みます。
特定の相続人に全財産を譲りたい場合、その相続人がもし相続開始前に死亡していた場合に備える必要があります。予備的遺言がないと、法定相続分に基づいて遺産が他の相続人に分配される可能性があり、遺言者の意図が反映されないことがあります。そうした事態を避けるために予備的遺言が有効です。
この場合も上記と同様です。財産を渡したくない相続人を避けた内容にしていても、意図せず渡ってしまう可能性があります。
将来のことは誰にもわかりませんので、年齢関係なく、特に若いうちから遺言書を準備しておくことを推奨します。
その中で予備的遺言を設定しておくことで将来的な相続人の変化に対して柔軟に対応でき、万が一の際に遺言書が確実に機能するようになります。
遺言者と相続人が同時に亡くなってしまった場合(交通事故などにより推定時刻が同じになる場合があります。)も考慮しておかなければならないので、「前に、または同時に」と記載しておく必要があります。
他の遺言内容と同様に、状況の変化に応じて予備的遺言を見直すことも重要です。
例えば、相続人の状況が変わったり、家族構成に変化があったりした場合には、予備的遺言も見直す必要があります。
定期的に確認し、必要に応じて更新することで、遺言者の意図が常に反映されるようにします。
法律や相続に関する専門家に相談することで、予備的遺言が法的に有効であり、より確実な遺言書を作成することができます。
予備的遺言は、遺言書で指定した相続人が遺言者よりも先に亡くなった場合に備える重要な手段です。
適切に活用することで、遺言者の意図が確実に実現されることを目指しましょう。
それぞれのケースに応じた最適な遺言書を作成するために、ぜひお気軽にご相談ください。