遺言書は、故人の意思を尊重し財産を適切に分配するための法的な効力を持つ文書です。
しかし、遺留分という法的に保護された相続分を無視した遺言書は、相続を巡るトラブルの原因となることがあります。
本コラムでは、遺留分を考慮するにはどうすればよいか、その方法を解説し、トラブルを避けるためのポイントを紹介します。
遺留分とは、一定の法定相続人に保障された最低限の相続分のことで、残された家族の生活を保障するための制度です。
そのため、相続方法としては最も優先度の高い遺言書よりも優先されます。
例えば、全財産を他人に遺贈する旨の有効な遺言書を書くことは法的には問題ありませんが、遺留分は遺言書よりも優先されるため、残された家族は遺留分侵害額を請求することができます。
法定相続人のうち、兄弟姉妹には遺留分はありません。
相続人 | 遺留分の割合 | 配偶者 | 子 | 直系尊属 | 兄弟姉妹 |
---|---|---|---|---|---|
配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | |||
配偶者と子 | 1/2 | 1/4 | 1/4 | ||
配偶者と直系尊属 | 1/2 | 1/3 | 1/6 | ||
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 1/2 | なし | ||
子のみ | 1/2 | 1/2 | |||
直系尊属のみ | 1/3 | 1/3 | |||
兄弟姉妹のみ | なし |
直系尊属のみが相続人であるときは相続分の1/3が、それ以外の場合は1/2が遺留分の割合です。
遺留分を認められている相続人には遺留分侵害額請求権があります。
「遺留分権利者及びその承継人は受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」(民法1046条1項)
と定められており、相続開始を知ったときから1年以内、又は相続開始の時から10年以内に権利を行使することができます。権利行使の方法については定めがないため、まずは話し合いを行い、そこでまとまらなければ家庭裁判所に調停・訴訟を申し立てることになります。
これが唯一といっていい方法です。
遺留分は法律で認められています。自身の資産情報を正確に洗い出し、遺留分権利者には最初から遺留分を侵害しないように相続させる遺言書を作成しておきましょう。
遺留分はあくまで権利であって義務ではありません。請求があって初めて効力を持ちます。
遺言書で遺留分侵害額について請求しないようにしてほしい旨の付言事項を書くことで、遺言者の最期の意思を汲んでくれる場合もあります。ただし、付言事項には法的な拘束力はないため、その通りになるかどうかは相続人に委ねられます。
遺留分は家族構成や財産状況によって変動するため、状況の変化に応じて遺言書を定期的に見直す必要があります。
問題がある遺言書は書き直しましょう。不安な点があれば専門家に相談しましょう。
遺留分を考慮することは、相続人間のトラブルを避け、スムーズな相続を実現するために非常に重要です。
相続人全員と遺言内容について話し合い、全員が納得する形を目指すのが理想ではありますが、なかなか難しい場合は専門家のサポートを受けながら、慎重に遺言書を作成することをおすすめします。