遺言能力とは?遺言書作成に必要なこと
遺言書を作成する際に必要な「遺言能力」について解説します。法的基準や年齢、制限行為能力者に関するポイントを解説。公正証書遺言の利点も説明します。

遺言能力とは?遺言書作成に必要なこと

 

はじめに

遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。(民法963条)

 

遺言書は、自分の財産をどのように分けるかを法的に確定するための重要な手段です。
しかし、遺言書が有効であるためには、遺言者に「遺言能力」が必要です。
遺言能力とは、遺言を行う際にその内容を理解し、その結果を認識できる能力のことです。

 

では、遺言能力がないと判断されるのはどのような状況でしょうか?

 

 

遺言能力の判断ポイント

年齢

十五歳に達した者は、遺言をすることができる。(民法961条)
一般的に15歳以上であれば、自分の財産についての判断ができるとされるため、未成年者であっても遺言能力が認められます
また、高齢者であれば判断能力の低下を疑う要素の一つになることはありますが、高齢というだけで遺言能力が否定されるわけではありません。

 

成年被後見人

精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある成年被後見人は、遺言能力はないとされていますが、
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。(民法973条1項)
と定められており、特定の状況であれば遺言書の作成が可能です。また、被保佐人と被補助人については定めはないため、単独で作成することができます。

 

遺言作成前後の行動や遺言の内容

高齢者や認知症であっても遺言能力があれば遺言書は作成できますが、相続開始後に遺言書の有効性を巡って遺言能力の存否が争われる可能性があります。

 

遺言作成に至る経緯や前後の言動に整合性がとれるのか、本人以外の意思により作成されたものでないか。
また、内容が複雑で難しいものである場合や、相続・遺贈する相手との関係性が合理的かどうかなどの諸事情も遺言能力の判断基準にあがります。
例えば、相続人の一人に全財産を相続するという内容の遺言書と、細かく複雑な指示をしているような高度な判断能力が必要とされる内容の遺言書では、前者の簡単な内容の遺言書の方が遺言能力があったと判断されやすくなります。
他にも、同居していた子供がいるのに疎遠で長年連絡も取っていない兄弟姉妹に全財産を相続するような内容では遺言能力がなかったと判断される可能性があります。

 

このように様々な事情から遺言能力の損ぴが判断されます。

 

 

遺言書作成時の対処策

作成者が高齢である場合や、判断能力に自信がない場合は以下の点に注意しましょう。

 

簡単な内容にする

簡単でわかりやすく簡潔な内容の遺言書よりも、複雑で難しい内容の遺言書は遺言能力に疑義を持たれる可能性が高くなります。

 

医師の診断を受けておく

これがあれば確実というわけではありませんが、有力な参考資料になりますので、不安がある場合は診断書をもらっておきましょう。

 

公正証書で遺言書を作成する

公正証書遺言とは、公証人が遺言書の内容を確認し、公証役場で作成する遺言書のことです。
自筆証書遺言と比べて、証人2人の立会いの下、公証人の前で意思を表示し、その場で公証人が遺言書を作成するため、遺言能力に関するトラブルを低減することができます。
ただし、遺言能力の最終的な判断は裁判所にあるため、わずかではありますが公正証書遺言でも遺言能力が否定され、遺言書が無効と判断された裁判例もあります。

 

 

まとめ

遺言書は、あなたの意思を確実に次の世代に伝えるための大切な手段です。
しかし、その遺言書が有効であるためには、遺言能力があることが前提となります。
遺言能力が疑われる前に、できるだけ早い段階で遺言書を作成しておくことが非常に重要です。

 

特に高齢者や、健康状態に不安がある方は、時間が経つにつれて遺言能力が問題視されるリスクが増大します。
遺言能力が十分にあると確信できるうちに、未来に備えて遺言書の作成を検討してみてください。
今こそ、自分の意思を明確にして大切な家族に安心を残しましょう。

 

遺言書作成に関するご相談は、行政書士佐伯和亮事務所の無料相談をご利用ください。
あなたの大切な意思が確実に伝わるようサポートいたします。