はじめに
高齢化が進む現代において、自身の老後や、高齢の家族の生活をどのように支えていくかは、多くの人が抱える重要な問題です。
「もしもの時」に備え、安心して生活を送るためには、元気なうちから将来を見据えた準備が不可欠です。
そのための有効な手段として、「
見守り契約」と「
財産管理委任契約」があります。
このコラムでは、それぞれの契約内容やメリット・デメリット、注意点などを詳しく解説します。
見守り契約とは?
見守り契約とは、一人暮らしの高齢者や、家族が遠方に住んでいる高齢者などを対象に、定期的な訪問や電話連絡などを通じて、
安否確認や生活状況の把握を行う契約です。任意後見契約と併せて契約することで、任意後見開始までの間のサポートとしても有効です。
見守り契約でできること
- 定期的な訪問:契約内容に基づき、自宅へ訪問し、健康状態や生活状況を確認します。
- 電話連絡:定期的な電話連絡で、安否確認や近況報告を行います。
見守り契約でできないこと
- 身の回りのお世話:原則として、買い物代行や家事などの身の回りのお世話は含まれません。
- 金銭管理:預貯金の引き出しや、支払いなどの金銭管理は行いません。
見守り契約の特徴
- 安心感の提供:定期的な連絡や訪問により、高齢者の孤独感を軽減し、高齢者本人や家族に安心感を与えます。
- 任意後見との連携:見守り契約で本人の健康状態や生活状況を把握することで、任意後見開始の時期を適切に判断することができます。
見守り契約の費用相場
電話や訪問の回数・頻度などのサービス内容によって異なりますが、一般的に月額数千円~2万円ほどです。
見守り契約を結ぶ際の注意点
- 信頼できる相手と契約し、契約内容を明確にする。
- 緊急時の対応について、事前に詳しく決めておく。
財産管理委任契約とは?
財産管理委任契約とは、判断能力がまだあるうちに、自身の財産の管理を信頼できる代理人に委託する契約です。見守り契約と同様、主に任意後見と併せて契約し、任意後見開始までの契約となります。
財産管理委任契約でできること
- 預貯金の管理
- 公共料金などの支払い
- 療養看護に関する手続き など
財産管理委任契約でできないこと
- 身上監護:身の回りの世話(食事の世話、入浴の介助など)を行うことはできません。
- 医療行為の同意:手術や投薬などの医療行為に同意することはできません。
- 訴訟行為:委任者の代理として訴訟を起こしたり、訴訟に対応したりすることはできません。
上記以外にも、金融機関によっては、財産管理委任契約書があっても、預貯金の引き出しや振り込みなどの手続きを窓口で行えない場合があります。
財産管理委任契約の特徴
- 柔軟な契約・即効性:委任する範囲や内容を自由に決めることができ、契約締結後すぐに効力が発生します。
- 監督機関がない:任意後見契約のような監督機関がないため、受任者による不正のリスクがあります。
- 判断能力がなくなると終了:委任者の判断能力がなくなると契約は終了します。
財産管理委任契約の費用相場
契約内容や委任する財産の規模によって異なりますが、一般的に月額1~5万円ほど必要になります。
財産管理委任契約を結ぶ際の注意点
- 信頼できる相手と契約し、契約内容を明確にする。
- 公正証書で契約書を作成する。
それぞれの契約の違い
|
見守り契約 |
財産管理委任契約 |
任意後見契約 |
目的 |
安否確認、生活状況の把握 |
財産の管理 |
判断能力が低下した後の身上監護と財産管理 |
対象者 |
一人暮らしの高齢者、家族が遠方に住んでいる高齢者など |
判断能力がある高齢者 |
将来的に判断能力が低下する可能性のある高齢者 |
開始時期 |
契約締結後すぐに |
契約締結後すぐに |
判断能力が低下した後、家庭裁判所が選任した任意後見監督人が後見開始の審判を申し立てる |
終了時期 |
委任者の死亡、任意後見の開始、または当事者の一方による解約 |
委任者の死亡、任意後見の開始、または当事者の一方による解約 |
本人が死亡した時、または家庭裁判所が後見終了の審判を下した時 |
契約方法 |
口頭でも可能だが、書面で作成することが望ましい |
公正証書で作成することが望ましい |
公正証書 |
まとめ
見守り契約や財産管理委任契約は、高齢者が安心して生活を送るための有効な手段です。
それぞれの契約内容やメリット・デメリットを理解し、自身の状況やニーズに合わせて適切な契約を検討しましょう。
高齢者の財産管理や生活支援に関するお悩みや疑問がある方は、どうぞお気軽に今治市の行政書士佐伯和亮事務所にお問い合わせください。