相続における、「法定相続人」に関しては別のコラムで既に述べてきました。
(相続の基礎!法定相続人と相続分を詳しく解説)
では、相続人が相続の開始前や、遺産分割完了前に亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか?相続手続きは様々な事情で複雑になってしまいます。
今回は、相続関係が複雑になるケースとして、「代襲相続」「数次相続」「再転相続」の3つについて解説します。
代襲相続とは、相続人が被相続人よりも先に亡くなっている場合、または欠格・廃除されている場合に、その子相続人の子が代わりに相続人となることです。
子の子(孫)、兄弟姉妹の子(甥・姪)がこれにあたり、この相続人を代襲相続人といいます。
遺言相続においては代襲相続が認められていません。予備的遺言が書かれていなければ、遺産分割協議の対象となります。
予備的遺言について詳しくは想いが伝わる遺言書を。予備的遺言で万全の準備ををご覧ください。
数次相続とは、最初の相続(一次相続)の遺産分割が完了する前に、次の相続(二次相続)が続けて発生することをいいます。現実に相続が複雑化する典型的な例が数次相続です。この場合問題になるのが、遺産分割協議は相続人が全員参加で全員同意を必要とする点です。
例えば、不動産の相続登記(名義変更)をしないまま月日が流れ、いざ土地を利用しようとしても、相続人が増えすぎてしまい、まず遺産分割協議が行えず、時間が過ぎていく中で新たな数次相続が発生し…となる場合などがあります。
再転相続とは、被相続人が亡くなった後、その相続人が相続の承認や放棄をしないまま熟慮期間中に亡くなった場合、相続人の相続人が被相続人の遺産を相続することを指します。これにより、相続が二重に発生することになります。
わかりにくいですね。例えば、祖父が亡くなり(一次相続)、意思表示をしないまま父が亡くなった(二次相続)場合、子が祖父と父の相続人となります。
熟慮期間
相続人が相続の承認または放棄を決定するために法律で定められた期間のことで、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内とされています。この間に相続人は、相続財産の内容を確認し、相続を承認するか放棄するかを決定します。
一次相続と二次相続それぞれについて承認か放棄か判断しなければいけませんが、できない組み合わせがあります。
二次相続の承認 | 二次相続の放棄 | |
---|---|---|
一次相続の承認 | 〇 | × |
一次相続の放棄 | 〇 | 〇 |
二次相続も承認することになります。
父の相続を放棄すると、祖父の相続における父の相続分も放棄することになります。
二次相続は承認と放棄のどちらでも選択可能です。
父の財産だけ相続することもできます。
今回は、相続関係が複雑になるケースとして、「代襲相続」「数次相続」「再転相続」の3つについて解説しました。
やむを得ない場合も往々にしてありますが、財産分割は早めに完了しておかないと、後々痛い目を見るかもしれません。
また、遺言書を作成し、その中で遺言執行者を指定しておけば、遺言者の意思に基づいて財産を放置することなく分配することができ、相続人間でのトラブルを予防することができます。
相続は、誰にでも起こりうる身近な問題です。
相続関係が複雑な場合や、相続手続きに不安がある場合は、お気軽にお問い合わせください。お待ちしております。