争族(そうぞく)とは、相続に関する相続人間の争いのことを指します。
相続が発生すると、遺産分割の方法をめぐって相続人の間で意見の相違が生じることが多く、場合によっては家族間で深刻なトラブルに発展することがあります。
本コラムでは、争族が起こりやすいケースとその対策について解説します。
「相続で争いなんて、お金持ちの家の話でしょう?ウチは揉めるほど財産もないし、兄弟姉妹仲も良好だから関係ないよ。」
こんな考えの方はとても多いと思います。
しかし現実に、「令和5年 司法統計年報」によると以下のようになっています。
遺産価額 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 2,448件 | 33.8% |
5,000万円以下 | 3,166件 | 43.8% |
1億円以下 | 863件 | 11.9% |
5億円以下 | 494件 | 6.8% |
5億円を超える | 33件 | 0.5% |
算定不能・不詳 | 230件 | 3.2% |
合計 | 7,234件 | 100% |
(最高裁判所事務総局. “令和5年 司法統計年報”. 裁判所 - Courts in Japan https://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search (アクセス2024-7-3))
表のとおり、相続争いは遺産の多寡に関係なく起こる可能性があります。
問題は遺産の額よりも遺産の種類や相続する人であるケースが多いことを知っておきましょう。
遺産が不動産のみ、又は不動産以外の遺産がほとんどない場合、分割が困難であるため争族が発生しやすいです。
不動産は現金のように簡単に分割できないため、売却して分割するか共有するかの選択になることが多いですが、居住している相続人がいる場合は売却することが難しいこともあります。
共有名義にした場合、「保存行為」は単独で行うことができますが、「管理行為」や「変更行為」は他の共有者の同意が必要になることもあるため非常に手間がかかります。
また、共有名義人が死亡した場合は共有分が相続されるため、どんどん共有名義の人数が増えたり関係が希薄な遠い親戚になり、処分するのが難しくなったりします。
特別受益や寄与分がある場合、相続時に公平性の問題が生じることがあります。
例えば、兄弟姉妹のうち1人にだけ下記のような行為があれば特別受益に該当する可能性があります。
また、無償で、被相続人の
のような場合には寄与分の主張が認められる場合があります。
寄与分:被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人に対し、貢献の度合いに応じた相続分を増加できる制度のこと
法律上、前妻(前夫)には相続権はありませんが、前妻(前夫)との間に子供がいる場合、その子には他の子と同等の相続権があります。
家族構成が複雑になると、相続に関する意見の一致が難しくなり、争族が発生するリスクが高まります。
これが理想ではありますが、なかなか難しいケースが多いと思いますので、現実的には「遺言書」を遺しておくのが最善の手段であるといえるでしょう。
遺言書で遺産分割方法を明確にし、遺言者の最後の意思を付言事項として記載しておくことで、遺言者の言葉を尊重し、争族を未然に防ぐ効果を期待できます。
重要な遺言書ですが、法的な要件を満たしていないと無効となり、それをきっかけにトラブルに発展する可能性もあります。そのため、遺言書を作成する際には費用がかかりますが公正証書遺言が良いでしょう。
公正証書遺言は、公証人が作成するため無効になるリスクが極めて低く、公証役場で原本を保管するため紛失の心配もありません。
また、専門家に依頼することで遺言書原案の作成や必要書類の収集、公証人との打合せなどの手続きを代行してもらえるため、依頼の検討をおすすめします。
争族対策には遺言書を作成しておくことが重要になります。
具体的な指示や意思を記載しておくことで相続人間の争いを未然に防ぐことができます。
相続に関する問題は、家族や親族の関係を複雑にすることが多いです。専門家への相談を通じて、適切な対策を講じましょう。
行政書士佐伯和亮事務所では、相続に関するご相談を随時受け付けておりますので、ぜひご利用ください。