「自宅を長男に託す」
遺言書にこう書いてあったら、あなたならどう解釈しますか?
遺言書は、あなたの「最後の意思表示」。大切な家族に、あなたの想いを伝えるための大切な手段です。しかし、せっかく遺言書を作成しても、曖昧な表現が含まれていると、あなたの真意が伝わらず、相続トラブルに発展してしまう可能性があります。
実際に、「〇〇に△△を託す」「〇〇に××を残す」といった曖昧な表現が原因で、相続人間で深刻な争いが起きた事例があります。遺産分割協議が長引いたり、裁判に発展したりするケースもあります。このような事態は、故人にとっても、残された家族にとっても、大変辛いことです。
そこで今回は、遺言書で避けるべき曖昧な表現について、具体的な事例を交えながら解説していきます。あなたの遺言書が、本当にあなたの想いを伝えるものになっているか、ぜひこの機会に見直してみましょう。
遺言書に曖昧な表現があると、相続人はそれぞれ自分の都合の良いように解釈してしまい、対立が生じやすくなります。
例えば、冒頭のように「自宅を長男に託す」と書いた場合、「託す」という言葉には所有権を移転するという意味だけでなく、単に管理や処分の方法について一任するという意味合いも含まれ、何をどう託すのか解釈の余地を残します。そのため、長男とそれ以外の相続人で意見が分かれる場合、トラブルに発展する可能性があります。
他にも、「預貯金を兄弟で分ける」と書いた場合、具体的な分け方が明記されていないため、相続人の間で意見が対立する可能性があります。平等に分割するのか、それぞれの生活状況に応じて分割するのか、故人の意図が明確でないため、争いが生じやすくなってしまうのです。
このようなトラブルは、相続人に大きな負担を強いるだけでなく、精神的な苦痛も伴います。故人が残した遺言書が原因で、家族関係が崩壊してしまうケースもあるのです。
(例)
上記のような表現はどれも解釈に幅があるため、使用は避けましょう。
故人の財産を法定相続人が引き継ぐことを「相続」といいます。
法定相続人を対象とする場合は「相続させる」という表現を使用しましょう。
法定相続人以外が対象であれば「遺贈する」という表現を使用します。
財産を特定して引き継ぐ場合は「特定遺贈」、特定せず割合で引き継ぐ場合は「包括遺贈」といいます。
ここまでは使用する言葉に着目してきましたが、引き継ぐ財産についても確実に特定できるよう具体的・正確に記載しましょう。
例えば「土地建物を~」や「預金を~」といった記載があると、所有する不動産や預貯金口座が複数ある場合は特定できず無効となってしまう場合があります。
現在では自筆証書遺言でも財産目録は自書でなくてもよいので、
不動産の登記事項証明書や預貯金口座の通帳、証券や車検証などはコピーして添付するのが確実です。ただし、記載のある全ページに署名・押印することを忘れないでください!
遺言書を作成する際には見る人によって解釈が分かれるような曖昧な表現は使用せず、意図が明確に理解できる用語を使用して、相続トラブルを防ぎ、あなたの最後の意思表示を確実に実行できるようにしましょう。
当事務所では、お客様一人ひとりのご状況に合わせて最適な遺言書作成のサポートを行っております。
遺言書の作成には専門的な知識が必要となる場合がありますので、ぜひお気軽にご相談ください。